第27回ときめき☆セミナー(※終了しました)
レヴィ=ストロースの「遠い眼差し」について
発表者:出口 顯 (島根大学)
日時:2012年2月10日(金) 16:20−17:50
場所:大阪大学(吹田キャンパス)生命科学図書館4階AVホール ※地図
※どなたでも自由に参加できます。
————発表要旨————
『構造人類学』、『構造人類学�』に続く第三論文集を一九八三年に出版した時、題名を『構造人類学�』とはしなかったのは、ただ足踏みをすることに満足し、その仕事が単なる繰り返しにすぎないという印象を与えかねなかったからだとレヴィ=ストロースは言っている。自身ではその研究が新しい道をたどったと感じており、それを示すために彼が選んだ題名が「遠い眼差し」 ( le regard éloigné、日本語訳は『はるかなる視線』)である。それは、世阿弥の「離見の見」を読んで思いついたもので、時間的にも空間的にもその社会から遠くにいる別の観察者が見るかのように、民族学者が自分自身の社会を見る態度をとてもうまく表わしていると思ったという。
しかし、自分の属する文化を、あたかも異文化であるかのように捉えなおすというだけなら、クラックホーンの『人間のための鏡』という前例があるように、人類学者の営みとしてしさして新しいことでもない。では「遠い眼差し」でレヴィ=ストロースが表わしたかった民族学者の態度の「新しい道」とは何であるのか。
この発表では、「遠い眼差し」とは、人類学者という舞台の上に立つ演者としてレヴィ=ストロースの眼差しに映った異文化の人々という観客(見者)の瞳の中に、自分自身の姿がどのように映ったかを反省的に捉え直そうとする姿勢であり、それを『はるかなる視線』のなかに読み解くことは可能かを述べてみたい。あわせて、近年の人類学に大きな影響を与えているヴィヴェイロス・デ・カストロのパースペクティヴィズムとの関連も考えてみたい。