第3回ときめき☆セミナー(※終了しました)

Ethnographic Machine: An Anthropological Experimentation toward Performative STS

発表者:森田敦郎(人間科学研究科・講師)

日時:2010年11月4日(木) 16:20−17:50

場所:人間科学研究科・東館304

* 当日発表は英文原稿の読み上げ、質疑応答は日本語/英語で行います

【発表要旨】

  1980年代から科学技術論(STS)の分野では、actor-network theory(ANT)と呼ばれるアプローチが台頭してきた。実験室の民族誌に依拠して、科学的事実=自然が人とモノの複雑な相互作用をとおして生み出される過程を描き出したANTは、自然と文化/社会、物質と観念/記号といった社会科学の基本的な概念をゆるがす大きなインパクトを持っていた。興味深いことに、ANTがこうした成果を上げられたのは、科学者やエンジニアの実践とそこに含まれる社会、物質、モノ、行為の混交を詳細に描き、それ自身が分析的な立場を取ることを控えるという(公式の)方法によるものだった。だが20年の時が経過した今日では、ANTのこうしたスタンスにも疑問が寄せられ始めている。
  本発表では、人類学者M. Strathernの民族誌的実験の方法を導入して、post-ANTの課題について考察することを試みる。Strathernは民族誌を、常識的な概念を不安定化するある種の実験と捉えてきた。この実験で彼女が多用してきたのが、メラネシア民族誌の事例と欧米の概念・実践を並置する独特の方法である。本発表では、タイの中小機械工業についての筆者の民族誌データを利用しながら彼女の方法をさらに拡張し、特異な並置をとおして「機械」と「民族誌」というSTSにとっての基本概念を同時に不安定化させる実験を試みる。





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